スカウトの逆襲、真の狙いはドラフト候補のチェック
2020年03月09日
3/9、日刊ゲンダイ27面「スカウトの逆襲」より
社会人のスポニチ大会は中止だし、センバツが開催されたとしてもオレたちスカウトは入れないかもしれない。このご時世だ。試合を見たいファンに遠慮してもらうのは分かるとしても、オレたちは仕事だからね。ホント、商売あがったりさ。
10日に埼玉で予定されていた12球団スカウトのコンペまで中止に。優勝狙って手にマメまでつくった極秘練習も水の泡か……なんて落ち込んでいたら携帯が鳴った。部長からだ。なるべく外出を控えておとなしくしてろって指示かと思ったら逆。「球団の二軍とか三軍が大学生や社会人相手にやるオープン戦を、しっかりマークしておけ!」って。
例えば5日には阪神の二軍が大商大とオープン戦をやった。8日には巨人の二軍が中大、10日には巨人の三軍が早大とオープン戦を行う。「スポーツマスコミは5日の試合を受けて、藤浪のデキがどうこう言ってたけど、あのオープン戦は藤浪の調整が目的じゃないからな」と、部長がこう続ける。
「あれは大商大のドラフト候補右腕・吉川貴大(動画)がプロのレベルでどうなのか、チェックしたい阪神サイドの意向で実現したんだろう。巨人が中大や早大とわざわざオープン戦をやるのも、目当てのドラフト候補がいるからさ。中大には内野手の牧秀悟(動画)、早大には左腕の早川隆久(動画)がいる。オープン戦は他球団のスカウトもネット裏から見るかもしれないが、ドラフト候補と対戦する投手や打者が、マウンドや打席で得られる生の情報は貴重だ。首脳陣も実際にグラウンドレベルでドラフト候補をチェックできるわけだからな」
こう言う部長が引き合いに出したのは過去にあったケース。例えば巨人が2013年のドラフトで東京ガスの石川を1位入札(クジでロッテが指名)したのは、事前にオープン戦をやって実力を把握していたから。西武が10年のドラフトで日本通運の牧田(現楽天)を2位指名したのも、事前のオープン戦での好投が大きな根拠になったらしい。
「当時は牧田を上位で評価する球団はほとんどなかった。けど、西武は実際に牧田と対戦したからこそ、その実力を正確に把握することができたんだ。コロナ禍だからって、ゴルフばっかりやってんじゃねーぞ!」。なんでバレたんだろう……なんてクビをかしげながら、渋々、手帳に書き込んだオープン戦の日程を見直したさ。
(プロ野球覆面スカウト)
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