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スカウトの逆襲、注目株が他球団に上位指名された話

2021年11月22日

11/22、日刊ゲンダイ37面「スカウトの逆襲」より
数年前の話だ。担当地区の高校生右腕の素質にホレ込み、スカウト会議で推薦。是が非でも上位指名すべきと口角泡を飛ばしながら力説したものの、部長やエライさんの反応はいまひとつ。

エライさんなんて「能力の数値から言っても4位か5位クラスです」と取り付く島がない。数字だけじゃ選手の能力は測れない。そのためにオレたちスカウトがいるんじゃねえかと言いたくもなったが、ドラフト当日。その高校生右腕がある球団に上位指名されたから留飲が下がったのなんの。

球団社長なんて会議後、わざわざオレのところに来て、「ウチは評価しなかったけど、キミが会議で盛んに推薦してた選手が上位で指名されたね」なんてニコニコしながら言ったほど。オレの株が上がったに違いないって、密かに喜んださ。

で、今年のドラフトでも、似たようなケースがあった。オレがドラフト前の会議で上位での獲得を進言した選手に対する球団の評価が芳しくない。5位くらいの指名が妥当だという。何だってこう、オレの言うことは受け入れてもらえないのか。ひょっとしてオレは、エライさんや部長に嫌われてるんじゃないかと思ったくらいさ。

ムシャクシャした気持ちでドラフトを迎えたら、案の定、その選手が他球団に上位指名された。その瞬間、思わず「ヤッター!」って声を上げそうになったね。球団は評価しなくても、見る人は見てる、オレの目は節穴じゃないって、こっそり小躍りしたくらいだ。

ドラフト後、今度は部長がオレのところにやってきて、「おまえが盛んに推薦した選手が上位指名されたな」と切り出したから、てっきりホメられるのかと思ったらそうじゃない。

「まさか、おまえが、あの球団に売り込んだんじゃねーだろうな。ウチはポジションの兼ね合いがあって見送るが、本来なら上位指名するはずだったとか何とか……」と、こう続けた。

「オレはあの選手を評価してない。何しろ投げ方が良くないし、体の開きも早い。この部分を直せば良くなるかもしれないというポイントがあるにはあるが、時間がかかる気がする。何年か前におまえが猛烈にプッシュした選手が他球団に上位指名され、社長にホメられたことをアチコチで吹聴してるようだけど、いまだにファームでくすぶってるじゃねーか。この前のドラフトでおまえが推薦した選手の真価が分かるのは数年後。喜ぶのは早いんじゃねーの」

部長の地獄耳には恐れ入ったけど、グーの音も出なかったね。(プロ野球覆面スカウト)



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draftkaigi at 06:52│
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