佐々木麟太郎(花巻東)、大学かプロか双方の思惑
2023年08月24日

佐々木麟太郎(花巻東高・一塁手) 183cm・右投左打・動画 |
甲子園準々決勝で敗れた花巻東の佐々木麟太郎(動画)。22日に発表されたU18日本代表メンバーは選外となり、10月の鹿児島国体に向けて調整を進めることになりそうだ。
注目の進路について麟太郎本人は「岩手に戻ってから決めると思います」と話し、父の佐々木洋監督らを交えて決定する方針。プロ入りか大学進学か、その決断に注目が集まる中、甲子園大会が終わったことで、双方に動きが見え始めた。
大学では、入学先の候補といわれていた早大への進学が暗礁に乗り上げているという。さる早大OBは「野球部のトップアスリート入試の枠は、ほぼ固まっている」と、こう続ける。
「野球部はトップアスリート枠が4枠割り当てられる。合格者は今夏甲子園出場校のバッテリーらが内定。麟太郎とともに高校三羽ガラスと言われた九州国際大付の佐俠史朗の入部もウワサされている。早大が麟太郎に関心を寄せていたのは間違いないが、進路の決断が後ろにズレ込んでいることが影響したようです。今後、9月に出願期間を迎えるスポーツ推薦入試を受けるかどうかでしょうが、事実上の無試験で、書類さえ出せば入学できる大学は山ほどあるだろうから、どうなんでしょうね……」
高校通算140本塁打の麟太郎はパワーがあってスイングスピードが速く、打者としての将来性を評価されている。あの大谷翔平の後輩で、佐々木監督の息子というサラブレッドでもある。スポーツ紙の1面を飾るほど注目度は高いだけに、大学からは引く手あまたである一方で、ある在阪の放送関係者は、「預かる方は大変ですよ」と、こう続ける。
「東京六大学の関係者から、『麟太郎が入学してくれれば話題になるし、能力的にも1年からレギュラーを取れる。4年後のプロ入りを見据えて、課題である守備、走塁に加え、体力面も鍛えていくわけですが、一番怖いのはケガです。高校時代は胸郭出口症候群の手術をし、背中や腰を痛めるなど故障が多い。打撃に関しても、大学野球のレベルで今以上の突っ込んだ指導は難しい』という声を聞いた。
欲しいのは欲しいけど、かといって4年間潰さず育てきることができるのか。不安を抱く大学指導者は少なくないでしょう。世間では『大学に進学して、じっくり鍛えたほうがいい』という声はありますが、むしろ、育成環境が整っているプロで下積みをしたほうがいいかもしれません」
プロ側も動きを見せ始めている。甲子園ではノーアーチに終わるなどプロへのアピール材料に乏しかった。ある球団のスカウトからは「守備、走塁のレベルが低い上に、持ち前の打撃もスイングに無駄な動きがあるなど、大幅な修正が必要」といった厳しい声が聞かれた。
評価を下げ、1位候補から外した球団がある一方で、将来性を加味して「麟太郎シフト」を組んで1位指名を検討している球団がいくつかあるという。その代表格が西武だ。編成トップの渡辺久信GMは7月、花巻東の岩手県大会初戦を視察。本気度の高さをうかがわせた。
「西武は中村剛也を筆頭に、巨体の選手を積極的に獲得し、能力を開眼させてきた実績がある。その中村は今年40歳を迎えた上に、4番の山川穂高が女性スキャンダルによって事実上の謹慎を余儀なくされている。司法の判断によっては退団もあります。同じくぽっちゃり体形の渡部健人もいますけど、大砲が喉から手が出るほど欲しい西武はすでに、1位指名を決めたとの話も聞こえてきます」(アマ担当記者)
西武以外にも、阪神や日本ハム、オリックスなどが1位候補に挙げる中、「西武が麟太郎の1位指名を確定すれば、その流れで複数球団が手を挙げるでしょう。ソフトバンクも麟太郎に関心を示しているようです」と、東日本の球団の編成担当がこう続ける。
「王貞治球団会長が麟太郎のスラッガーとしての将来性に魅力を感じているといいます。飛ばす能力は天性のものを持っていますからね。ソフトバンクはかつてトリプルスリーを獲得した柳田悠岐に次ぐスラッガーがいない。その柳田も今年10月で35歳。近年は清宮幸太郎(17年ドラフト→日本ハム)、佐藤輝明(20年ドラフト→阪神)と大砲を1巡目指名したものの、クジで外している。麟太郎がプロ入りを決断すれば、ソフトバンクも手を挙げる可能性はあるとみています」
プロが1位を確約すれば、かねてプロ志向が強い麟太郎のプロ入りが前進するのは間違いない。佐々木家の家族会議の行方はいかに──。


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