ドラフト総括
2022ドラフト総括(デイリースポーツ)
2022年10月21日

今回のドラフトは、当日までに1位公表が9球団と超異例になった。競合を避けたい各球団は事前に1位指名を公表し、他球団をけん制。そういったこともあり、競合したのは高松商・浅野と立大・荘司の2選手のみ。目玉不在ということもあり、各球団補強ポイントに当てはまる好素材を獲得した。
今年は「不作」といわれ、全体の指名数(支配下)は69人にとどまった。昨年の支配下指名は77人。12球団のうち、5球団が5巡目で選択を終了し、6巡目で終了したのが5球団。最多の7巡目で終了したのが広島と中日の2球団だった。
一方、育成ではソフトバンクが2年続けて最多の14人を指名。巨人も9選手を指名した。注目選手が少ないとされた中でも、身体能力が高い選手や一芸で光るものがある、素材型の選手を積極的に獲得。育成選手から一流選手が生まれているように、プロの世界で育てて、戦力にする考えがみられる。

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パ・リーグ4球団の高校生一本釣りの波紋
2021年10月13日

ここまでスポーツ紙の予想が外れるのも珍しく、事前に1位指名選手を公表したのは、たったの2球団。ほとんどの球団が手の内を明かさないまま本番に臨んだ結果なのかどうか、1位選手の一本釣りが6球団もあったのは異例と言えば異例だろう。
11日のドラフトは、西武が4球団競合の末に西日本工大の隅田知一郎のクジを引き当てた一方で、単独1位指名が6球団もあった。中でも、パ・リーグ4球団の指名は異例だった。楽天が昌平の吉野(動画)を指名すると、日本ハムは天理の達(動画)、ソフトバンクは明桜の風間(動画)、そして、ロッテも市和歌山の松川(動画)と高校生を指名した。
12球団のスカウト活動は、昨年からのコロナ禍で選手を視察する機会が限られている。トーナメント方式で負けたら終わりの高校生を優先的に視察したことも影響しているにせよ、それ以上に育成の意識と意欲が高い。
吉野は185センチの恵まれた体躯で高校通算56本塁打。コロナ禍で実戦の機会が少なかったことを考慮すれば、かなりの数だが、スポーツ各紙は外れ1位候補にすら入れていなかった。1位指名の理由について、石井GM兼監督はこう言った。
「高校生の一番の打者で、将来の中心選手になってくれるということが優先順位として一番大きかった。監督としては即戦力の選手が欲しいなというのはもちろんあるが、(GMとして)球団のことを考えた時に目先のことだけじゃなく、3~4年後というところをしっかりとプランニングしていかないといけない」
達を指名した日本ハムも、吉村GMがドラフト前日、「その場の補強ではない。最も高いポテンシャルの選手」と言っていた。
「達は高校生の中で潜在能力の高さはピカイチ。193センチの長身で、長い腕と可動域の広さを存分に生かしつつ、低めにボールを集める制球力の高さも兼ね備えているが、体は成長過程。ロッテの佐々木朗希のように段階を踏んで育てる必要がある」(セ球団スカウト)
ソフトバンクの風間やロッテの松川も将来性を見込んでの指名。今年は即戦力を重視した西武やオリックスにしても近年は高校生を上位指名し、中心選手に育てようとする傾向がある。
一方のセは、巨人を筆頭に「即戦力」重視のドラフトだった。阪神とDeNAが高校生を1位指名したくらいで、短期的な「補強」を優先した。
一昨年の19年ドラフトはその傾向が顕著だった。育成に時間を要する大船渡高・佐々木朗希を1位指名したのはパの4球団。より即戦力に近いといわれた星稜高・奥川恭伸を1位指名したのはセの3球団だった。
「将来性のある高校生は当たり外れがあるものの、潜在能力の高い選手を時間をかけて中心選手に育て上げようとする意識はパの方が強い。それが10年連続で交流戦を勝ち越し、日本シリーズも昨年まで8連覇するなど、『パ強セ弱』の一因になっているのではないか」とは、パ球団のスカウト。
今年のドラフトの結果が出るのは数年後だが、パの優位は今後も続きそうな気配だ。

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セ・リーグ6球団の2021ドラフト総括
2021年10月12日

ドラフト会議が終了し、12球団から育成を含めて128選手が指名された。その成果が分かるのは来季以降となるが、それぞれ、各球団の狙いが見える指名となった。
【ヤクルト】
外れ1位で法大の山下輝投手(動画)の交渉権を獲得した。「左投手、即戦力を狙っていた。2回目にはなったけど、山下君を指名できてよかったです」と高津監督。投手力強化へ、最速156キロの剛速球が光る日本通運・柴田(動画)も3位で指名した。
2位では俊足巧打が光る明大・丸山(動画)。4、5位は高校生で将来性も見据え、高津監督も「一巡目のくじを当てられなかったんですけど、そのあとの左ピッチャーであったり野手であったり高校生の内野手、ピッチャー、すごくバランス良く指名できたと思います」と振り返った。
【阪神】
外れ1位で高知・森木(動画)の交渉権を獲得できたことで2、3、5位では大学・社会人の3投手を指名。6位の日立製作所・豊田(動画)は補強ポイントだった強打が光る右打ちの外野手。4位では甲子園でも活躍した左の長距離砲の智弁学園・前川(動画)、7位は京都国際・中川(動画)も将来性豊な強肩捕手だ。
来季も見据えた補強となり、矢野監督は「いいドラフトができた」と満足げ。「森木が残っていた流れからトータル、左補強できてとか、岡留も取れてか全体的な流れが良かった」と総括した。
【巨人】
先発の駒不足に泣いた今季。弱点解消へ、7選手のうち6選手が投手となった。外れ1位は右でナンバーワン評価をしていたという関西国際大・翁田(動画)を指名。2位でJR東日本・山田(動画)、3位も日大・赤星(動画)と即戦力で戦力アップを図った。
センバツ優勝投手の東海大相模・石田(動画)、明徳義塾・代木(動画)、広島新庄・花田(動画)の将来性豊かな投手も3選手指名。5位指名の法大・岡田(動画)はチームに不足する左のスラッガー。原監督は「90点以上ですね。上位指名はもちろん、4、5、6、7位も非常に魅力ある選手。よくぞこういう素晴らしい選手が残ってくれた」とうなずいた。
【広島】
ドラフト1位で関西学院大・黒原(動画)、2位で三菱重工West・森(動画)の左腕2投手、3位では補強ポイントの右打ち外野手、トヨタ自動車・中村(動画)を指名した。4位で左のスラッガー愛工大名電・田村(動画)を挟んだが、5、6位で社会人2選手を指名するなど即戦力へのこだわりがみえた。
佐々岡監督は「左の即戦力として黒原君も評価していた。即戦力と完成度もしっかりできている」と語った。
【中日】
12球団ワーストの得点力不足解消へ、1位で上武大・ブライト健太(動画)、2位で駒大・鵜飼(動画)、6位で大阪商業大・福元(動画)と強打の外野手をトリプル獲り。メッセージ性の強いドラフトとなった。
大野雄に続く存在としての期待をこめ、独立リーグの155キロ左腕、九州AL熊本・石森(動画)を3位指名。毎年こだわる地元枠で豊橋中央・星野(動画)を5位指名した。
【DeNA】
ドラフト1位で高校生ナンバーワン投手の呼び声があった市和歌山・小園(動画)の交渉権を獲得。5位でも甲子園で活躍した専大松戸・深沢(動画)を指名して将来を見据えた。三浦監督は小園について「高校生の中でも飛び抜けている。スカウトの中でも一番評価が高かった。もっとすごい選手になるのが楽しみ」と満足げだった。
一方で今季は12球団唯一のチーム防御率4点台と苦しんだことから、2位で早大・徳山(動画)、4位で法大・三浦(動画)の先発型右腕も指名した。5位では左の強打者、神奈川大・梶原(動画)。
三原代表は2位指名した早大・徳山は「大学生の投手の中で1番の評価」と明かし、野手についても「内、外野、うちの中では評価の高い選手でバランスのいい獲得」と話した



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パ・リーグ6球団の2021ドラフト総括

ドラフト会議が終了し、12球団から育成を含めて128選手が指名された。パの各球団はサプライズ指名を連発し、5球団が単独で1位指名。西武も4球団競合の末に交渉権を獲得し、理想的な展開となった。成果が分かるのは来季以降となるが、各球団の狙いが見える指名となった。
【オリックス】
1位で東北福祉大・椋木(動画)を単独指名。補強ポイントであるリリーフでの起用も見据えた補強となった。さらに二遊間強化へ巧みなバットコントロールが光る関大・野口(動画)を2位指名。
3位では強肩捕手の国学院大・福永(動画)、4位も慶大・渡部(動画)、6位はセガサミーの右腕・横山(動画)と即戦力重視のドラフトとなった。高校生は5位の大阪桐蔭・池田(動画)だけだった。
【ロッテ】
井口監督が「チームの一番の補強ポイントだった」と振り返ったドラフトは、大方の予想を覆して1位で市和歌山・松川(動画)を指名。「将来必ずマリーンズそして日本を代表する捕手になる」と太鼓判を押した。
2位で右のパワーヒッター、国士舘大・池田(動画)、3位で三菱自動車倉敷の本格派右腕・広畑(動画)を指名できたことも大きい。
【楽天】
独自路線を貫くドラフトとなった。1位で長距離砲として期待される昌平・吉野(動画)を単独で指名。2位は愛知大の捕手・安田(動画)、3位は三島南の外野手・前田(動画)と、全国的には無名の選手の指名が相次いだ。
石井GMは「名前がすごく分かる方が想像しやすいのかもしれないですけど、スカウトの皆さんはコロナ禍で大変な中でも、選手を担当地区で見てくれている」と説明。5位以下では大学・社会人の3投手を指名し、選手層を厚くした。
【ソフトバンク】
1位は公表していた明桜・風間(動画)で単独指名に成功。2位は大学生ナンバーワン外野手の呼び声が高い慶大・正木(動画)を指名した。今季は投手陣の故障に苦しんだことから、4、5位では即戦力投手も指名。
王会長は「望んでいた通り風間君の交渉権が獲れて、その後の指名も狙い通り。今年は久々に満点と言える結果になったんじゃないか」と振り返った。
【西武】
4球団の競合を制し、1位で西日本工大・隅田(動画)の交渉権を獲得。2位でも筑波大・佐藤(動画)と即戦力左腕のダブル獲りに成功した。森に続く捕手として中大・古賀(動画)を3位指名。
4、5位では素材型の高校生投手、6位では大型遊撃手の白鴎大・中山(動画)とチームの補強ポイントを的確に埋めた。
【日本ハム】
最も多い9選手を指名。将来性を重視したドラフトとなった。1位で長身右腕の天理・達(動画)、2位で強打が売りの千葉学芸・有園(動画)を指名。4位でも左のスラッガー、岐阜第一・阪口(動画)、5位でも中京大中京・畔柳(動画)、7位で大阪桐蔭の大型左腕・松浦(動画)の交渉権を獲得した。
JR四国・水野(動画)は俊足巧打が光る遊撃手。下位は即戦力での起用も見据えて大学社会人選手を指名した。



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2020ドラフト総括(デイリー特命スカウト)
2020年11月12日

今年のドラフトはコロナ禍の影響で例年とは感じの違うドラフトになった。試合が見られずデータは少なかったかもしれないが、ある意味、選手の人気にとらわれず、スカウトの判断通りに指名できたのではないだろうか。
いつもなら各地区の担当者が早くから目を付けて追いかける。お目当ての選手が大舞台で活躍すれば、メディア露出も増えて知名度が上がり、スターが生まれる。実力本位でドラフト戦術を立てるのは基本だが、そういった人気やスター性も順位の判断基準になるものだ。
しかし、今年は選手の知名度が上がる機会もほとんどなかったため、スカウトの評価がそのまま順位に反映されることが多かったと思う。
各球団の戦略で印象に残ったのは、競合のリスクを回避してトヨタ自動車・栗林を一本釣りした広島。また、近大・佐藤の外れ1位で花咲徳栄のスラッガー井上を指名したソフトバンクと、福岡大大濠の153キロ右腕・山下を指名したオリックスは、クジを外した時点で思い切りよく即戦力から将来性に方針を転換した。
また、最も目についたのは、巨人の育成ドラフト指名の多さだ。史上最多の12人指名は、次世代のチーム作りを期待したのだろう。
今ドラフトが早大・早川(楽天1位)と近大・佐藤(阪神1位)を中心に動いたことは間違いないが、直前で鍵を握る選手がもう一人出てきたのも異例だった。中京大中京高の最速154キロ右腕・高橋(中日1位)だ。
夏の甲子園での交流試合を見たスカウトなら必ず獲得したいと思った選手で、高校生時代の松坂大輔以上といっても過言ではない存在。しかし、早い時期から慶大へ進学希望と言っており、プロ側も大学へ行くものと思い込んでいた。
入試に落ちてプロ志望届の締め切り直前に届けを出した時には、各球団のスカウトも慌てふためいたことだろう。それほど、戦略全体に関わる存在だった。
その頃にはもう大学、社会人の指導者へ、1位指名の旨を伝えてあいさつを済ませている球団が大半。高橋が急にプロ志望に転じたとはいえ、簡単に方向転換はできない状況だった。プロ志望が分かっていれば、違う戦略も取れたと歯ぎしりした球団もあっただろう。
ドラフトの評価は、その球団が意中の選手を引き当てたかどうかによる。しかし、そこから先はまた別で、1位の選手が必ず活躍するとは限らない。コロナ禍という特別なドラフトでプロ入りした今年の選手たちの活躍を楽しみにしたい。

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